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最高裁判所第一小法廷 昭和57年(行ツ)180号 判決

島根県安来市黒井田町七〇〇番地一

上告人

高林商事株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

右訴訟代理人弁護士

多田紀

松江市内中原町二一番地

被上告人

松江税務署長 松森暹

右指定代理人

東清

右当事者間の広島高等裁判所松江支部昭和五六年(行コ)第一号法人税額等更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五七年九月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人が親会社及び旧高林産業に対して支出した本件係争の負担金は法人税法三七条五項所定の寄付金にあたるとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の認定しない事項を前提とし、又は原審で主張しない事由に基づき原判決を論難するものにすぎず、いずれも採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判所裁判官 藤崎萬里 裁判官 中村治朗 裁判官 谷口正孝 裁判官 和田誠一)

(昭和五七年(行ツ)第一八〇号 上告人 高林商事株式会社)

上告人の上告理由

第一

一 (恣意的な認定について)

(a)(イ) 上告人に対する更正通知については債務保証の対価として保証料相当額を寄付金の額から引いてやると称して最初の三年度分(昭和四八年度ないし五〇年度)は上告人の帳簿を調査する事なく(法人税法第一三〇条違反)勝手に銀行に照会し、保証料計算の基礎となる金額には商業手形(手形貸付、割引手形を含む)の金額も含んでおります。

(ロ) 後の二年度分(昭和五一年度及五二年度)は長期借入金のみについて帳簿調査が行なわれその金額のみが保証料計算の基礎となっております。

(ハ) 保証料の計算方法が違えば当然税額が違ってきます。前三年度分が商業手形の金額を保証料計算の基礎としているなら後二年度分も同様に行なうべきものであり誠に恣意的な認定といわざるを得ません。

(b) 上告理由

(イ) 正しいものが二つ(前三年度分と後二年度分)ある訳がありませんから何れかが違っています。

(ロ) 同一条件同一負担(公平負担)の原則から外れます。

(ハ) 第一の一(a)(イ)にのべた如く前三年度分の調査は法人税法第一三〇条に違反しています。

(ニ) 「処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制する」との判示は最高裁二小昭和三八年五月三一日に示されており、恣意的認定は右判例に反します。

(c) 以上第一の一、(b)にのべた如く本件各処分は、適法な処分とは申されませんから、その取消しを求めます。

二 (自由裁量権について)

(a) 被上告人は昭和五四年一〇月三一日付準備書面において「保証料の認定は誤りであった」といいだしました。

そうすると更正の税額は増加します。当然再更正を行なうべきであります。再更正は行なわれておりませんから国税通則法第二六条違反となります。

(b) 被上告人は法人税法第一三〇条で義務づけられている付記理由で認めたもの(白)を再更正も行なわず認められない(黒)従って撤回するというような自由才量権はありません。

納税者は課税庁に課税を白紙委任している訳ではありません。

(c) 上告理由

(イ) 再更正も行なわず「保証料の認定は誤りであった」という事は国税通則法第二六条に違反します。

(ロ) 付記理由として記載してあるものは一部と雖も撤回することは法人税法第一三〇条の趣旨に違反します。

(ハ) 昭和三八年五月三一日最高裁二小判示「一般に法が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものである」との判例に違反します。

(ニ) 自由才量権を認めることは租税法律主義に違反し従って憲法三〇条違反となります。

(d) 以上第一の二(c)にのべた如く「右の範囲内でなされた本件各処分は適法である」とは申されませんからその取消しを求めます。

第二 (被上告人の更正理由記載不備について)

一 上告人にとっては旧高林産業は親会社ではありません。

旧高林産業と親会社に支払った負担金はその性格を異にしています。

寄付金として合計された金額の内どれだけが高林開発に属し、どれだけが旧高林産業に属するのか、特定されていませんからその内容は推知できないものであります。(昭和四八年度および四九年度)

二 又役務の対価として認めてやると称して各金融機関よりの借入金の合計が計上してありますがその内容も推知できないものであります。(昭和四八年度から五二年度まで)

前三年度分(昭和四八年度から五〇年度まで)と後二年度分(昭和五一年度及び五二年度)の金額は商業手形を対象にしたり、しなかったりしている事はキ述の通りであります。

三 上告の理由

更正理由は左記判例に反しています。

(イ) 最高裁二小昭和三八年五月三一日判決

「帳簿書類の記載以上に信ピョウ力ある資料を摘示して処分の具体的根拠を明かにすることを必要とする」

(ロ) 最高裁二小昭和三八年一二月二七日判決

「その理由を納税義務者が推知できると否とにかかわりない問題といわなければならない」

四 以上のとおりでありますから原処分の更正理由記載不備として原処分の取消しを求めます。

以上

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